消えた高校生の謎
- アキラ イハラ
- 5月28日
- 読了時間: 5分
更新日:6月5日
― 高校生10万人が行方不明 -

高等学校の中途退学者数は減少傾向にあると言われています。退学者の数は2000年頃には10万人を超えていましたが、その後減少傾向が続き、2023年の調査では5万人を下回るまでになりました。令和5年度(2023年度)に全日制高校・定時制高校に在籍した生徒の総数は、約290万人ですから、およそ1.5%の生徒が中途で退学したことになります。

(文部科学省:児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果より作成)
高校生10万人が行方不明
高等学校の生徒数の変化を別の観点から追ってみましょう。例えば令和2年の高校1年生の数は、文部科学省の学校基本調査によれば、1,027,330人となっています。この生徒のほとんどは翌年、高校2年生になります。翌令和3年の高校2年生の数を同じように学校基本調査の数値で見てみると、999,647人となっています。27,683人減少しています。さらに、その翌年の令和4年の3年生の数は、973,518人で、さらに26,129人減少しています。そして、彼らが卒業する令和5年3月の卒業生数は、918,850人と、54,668人も減少しています。

(学校基本調査より作成)
令和2年に高校へ入学した生徒1,027,330人のうち3年後の令和4年度卒業生となったのは918,850人で、約10万人以上の生徒が、入学から卒業までの間に消えてしまっていることになります。彼らは一体どこへ行ってしまったのでしょうか?
「原級留置」?「中途退学」?
次の学年に進級しなかった生徒のケースを考えてみると、まず「原級留置」が考えられます。全日制高校や定時制高校では、多くが学年制をとっているため、学力や出席日数が原因で学年に配当された単位を修得できなかった場合、原則的には「原級留置」つまり留年の措置が取られます。ですから、減少数の一部は留年して、その学年にとどまったと見ることができます。
次の考えられるのが「中途退学」、中退です。中途退学の事由としては、学業不振や学校への不適応、進路変更、病気・ケガ・死亡、経済状況など家庭の事情、問題行動などが考えられます。学業不振や出席日数の不足などで、留年が見込まれることから中退という選択をしたケースもあるに違いありません。
しかし、減少数を留年と中退で説明することは少し難しいようです。以下の表をまとめました。

※「原級留置者数」「中途退学者数」は、「文部科学省:児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」による
令和2年の1年生から減少数は27,683名ですが、原級留置の数が2,791名、高校中途退学者数は11,233名ですから13,659名がそれら以外の理由で高校2年生になっていないことがわかります。同じように、令和3年の2年生の減少数は26,129名ですが、原級留置者数が1,979名、中途退学者が8,925名ですから、15,225名がそれら以外の理由で高校3年生ならなかったことがわかります。高校3年生では50,631名が留年と中途退学以外の理由で卒業していません。合計すると約8万人にもなるこれらの生徒はどこへ行ってしまったのでしょうか。
「転校」?
もう一つ考えられることは、「転校」です。これには、保護者の転居などに伴って、居住地が変更になり、通学の継続が困難になり、新しい居住地の最寄りの高校に籍を移したものもありますが、これほど多くの生徒が転居を理由に転向したとは考えにくいと思います。
それ以外に、何らかの事情で在籍校を変更する選択をしたケースです。進路変更や、人間関係のトラブルなどが考えられます。こうした「転校」の多くが、通信制高校を転校先として選択しています。
通信制高校への入学者の内訳には、「新入学者」・「編入学者」・「転入学者」の3種類があります。

新入学者は、中学からどこの高校も経ずに直接通信制高校へ入学してくる生徒です。この数も近年は驚くほど増加してきています。

(学校基本調査より作成)
編入学者は、高校に入学した経験を持ち、退学した後に別の高校に入学する生徒です。1年生(修得単位ゼロ)からやり直すこともありますが、前籍校で学年を修了していれば、修得した単位をもって、残りの必要な単位数を修得することで卒業資格を得ることができます。
これに対して、転入学者は、前籍校に籍をおいた状態から、通信制高校に籍を移す生徒です。すでに修得した単位があればその単位を持って転入できるだけでなく、学年の中途までの学習の一部を、新しい通信制高校に引き継ぐこともできます。
通信制高校の生徒には、こうして「編入学」・「転入学」の形をとって入学してくる生徒が相当数いるのです。
「転入学」と「編入学」
「転入学」と「編入学」の大きな違いは、前籍校において「中途退学」の手続きがなされたかどうかという点にあります。そして、実際の場面では、通信制高校に移籍後の単位修得が有利な「転入学」の形がとれるよう、前籍校の先生が配慮しているケースも多数見受けられます。「編入学」のほとんどが、学期の区切りに合わせて行われるのに対して、「転入学」は、単位修得が可能な限り、10月以降も受け入れを行うところが多いようです。
整理すると、進級しなかった生徒の減少数の内訳としては、
■ 中途退学(中退)
■ 原級留置(留年)
■ 転学(転校)
の3つが、考えられます。中途退学数や原級留置者数は、文科省の調査の数値に上がってきますが、転校者数そのものは明確には把握されていないようです。転校先の多くが通信制高校と考えられますが、学校基本調査では通信制課程への「年度途中入学者数」として平成29年以降は毎年2.1万から2.6万人が把握されています。「転学者・転籍者はその数に含む」とされていますが、その数値だけではうまく説明ができません。
2024(令和6)年の学校基本調査では、通信制高校の生徒数が29万87人(5月1日現在)と公表されました。しかし、「転入学」は5月1日以降にも行われることから、通信制高校に「転入学」によってかなりの数の生徒が流入していることを考えると、30万人をさらに上回る生徒数であると考えられるのではないでしょうか。
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