中山間地域とアントレプレナーシップ教育
- 2025年10月28日
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更新日:1月22日
アントレプレナーシップ教育は、人口減少と少子高齢化などの課題を抱える中山間地域の子どもたちにこそなお有効な教育なのではないでしょうか。

急速な人口減少地域で生きていくこと-アントレプレナーシップ教育は中山間地域の教育に有効。
下のグラフはある自治体の人口の推移を予想したものです。現在1万人ほどの人口が、2050年には半数の約5千人にまで減少すると考えられています。

国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口 令和5年推計」
この自治体は九州の中山間地域と呼ばれる、山間部の農業や林業を主産業とする町です。こうした中山間地域は、日本の国土の7割を占めると言われ、そこに位置する自治体ではどこも急速な高齢化と人口減少という問題に直面しています。
中山間地域の教育課題
こうした地域の教育環境にも多くの課題が見られます。義務教育段階では、各学年の生徒数が少ないことから、複数の学年の生徒が一つの教室で同時に学習する複式学級での授業が行われ、さらに学校の統廃合などにより、徒歩圏内に学校がなくなるどころか、統合の末スクールバスなどを活用しても毎日1時間以上の通学時間を要するケースも見られます。
また同年代の友達の数が少ないことは、人間関係の固定化につながります。協働的な学習の導入が押しすすめられる昨今においても、意見を交換する相手が限られることで多様な考え方や意見に十分に接することができない、またいつも数人の限られたコミュニケーションの中にいるため、親密でない人間関係の中でのコミュニケーション能力が育ちにくいなどの課題が指摘されています。
学習以外の活動では、運動会や学習発表などの行事の規模が限られることや、中学では部活動の種類が限られることも都市部の生徒との体験格差とされています。
また、進学先となる高校の選択肢が極端に限られていたり、高校段階から親元を離れて都市部の高校へ進学しなければならなかったりすることもこうした過疎地域の教育課題です。
しかも、一度地域を離れた子どもは、都市部で進学・就職し、そのほとんどは地域に戻ってきません。こうしてさらに過疎化、少子高齢化に拍車がかかります。
一方で、世界は「VUCAの時代」と呼ばれる予測困難な、変化の激しい時代、あるいはSociety5.0と呼ばれる超スマート社会へとつき進んでいます。こうした急激な変化の中で地域の担い手となる子どもたちにはどのような能力が必要なのでしょうか。
文部科学省は、失敗を恐れず、新たな価値やビジョンを想像できる人材の育成を目指して、アントレプレナーシップ教育に力を入れ始めています。
3. アントレプレナーシップ教育とは?
アントレプレナーシップ教育は起業家教育ともいわれ、狭義には起業家(アントレプレナーentrepreneur)を育成する教育を指しますが、 最近では、必ずしもビジネスを起業する起業家そのものの育成を目指すのではなく、起業家に求められる性質や態度を育成する教育として幅広くとらえられるようになりました。従来は経済産業省がこれを推進してきましたが、文部科学省でも、小学校からアントレプレナーシップ教育に取り組むことを推し進めています。
文部科学省は、アントレプレナーシップ教育を「自ら社会課題を見つけ、課題解決に向かってチャレンジしたり、他者との協働により解決策を探求したりすることができる知識・能力・態度を身に付ける教育」と説明しています。
(引用:全国アントレプレナーシップ人材育成プログラム|文部科学省)
起業家に必要とされる精神や資質・能力としての、チャレンジ精神、創造性、探究心、情報収集・分析力、判断力、実行力、リーダーシップ、コミュニケーション力等の育成が、これからの世界を生きていく能力として必要であると考えられるようになったのです。。
改めて整理すると、アントレプレナーシップ教育によって、以下のような効果が期待されています。
① 創造力と問題解決能力の育成
② リーダーシップと協働のスキルの養成
③ 金銭管理と経済の基本知識の獲得
④ 自己肯定感の向上と成功体験
⑤ 社会とつながる意欲と責任感の育成

日本では、一部にまだ経済活動を学習より一段低く見るような考え方も残っており、子どもたちが企業に関わることを学ぶと聞くだけで眉をひそめる人達がいるのも確かです。
しかしここでは、アントレプレナーとは必ずしも「お金もうけ」を目的にする人たちではなく、様々な困難や社会課題の解決を行う人、誰かの需要と供給をつないだり、異なる分野の知恵や知識を組み合わせて新しいアイデアに導いたりできる人を指します。
4.過疎地域にこそアントレプレナーシップ教育が必要-アントレプレナーシップ教育は中山間地域の教育に有効。
アントレプレナーシップ教育は、子どもたちが地域社会とのつながりを実感し、社会的責任を意識するきっかけとなります。様々な困難を抱える地域では、その地域にはどのような課題があるのか、そまたどのような資源があるのかなどを知ること、そして課題を解決する方法を考えることなどを通じて、地域社会で生き抜くために必要な知恵や知識を身に着け、地域貢献する喜びを知ることにつながります。
このように見てくると、アントレプレナーシップ教育は中山間地域の教育に有効。つまり、アントレプレナーシップ教育は、VUCAの時代、Society5.0の時代の中で生きていく子どもたち、中でもインフラに恵まれた都会よりも、人口減少と高齢化や、集落機能の低下、産業の衰退などさらに多くの課題や困難に直面する可能性の高い過疎地域の担い手となる子どもたちにとって重要な教育と考えることができるのではないでしょうか。




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